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2020年4月23日木曜日

『ファクトフルネス』 (デーリー東北新聞 2020年3月25日掲載)

『ファクトフルネス』
(デーリー東北新聞 2020年3月25日掲載)



 「うんこはく君」というキーホルダーを作った。かわいらしいうんこのイラストに久慈
産琥珀粒をあしらったお土産品だ。

 SNSで公表すると「おもしろい」「欲しい」などの声を多数頂いた。しかし、中には「琥珀とうんこを組み合わせるのはどうか」「琥珀を販売している人がどう思うか」という意見もあった。

実際、琥珀を発掘しアクセサリー等の販売を行っている上山琥珀工芸の上山昭彦さんはこのキャラクターを面白がってくれている。

「うんこはく君」の始まりは久慈商工会議所から声を掛けられた「こはくびと運動」だ。この運動は主に琥珀の作業屑(POPアンバーと呼ぶ)を使って、気軽に持てる琥珀製品を作り、久慈市民はみんな琥珀を持っている未来を作ろうというものだ。

当初、これには「琥珀の高級なイメージを壊さない方が良いのではないか」という意見もあったが、琥珀がより身近なものになれば、郷土愛や歴史文化の伝承につながっていくのではないかと考え、私はこの運動に参加することにした。

久慈産琥珀は9千万年前の樹脂の化石であり、地球の営みや人間の文化、歴史に深く携わってきた。ジオパーク的視点から見ても価値がある。運動に賛同した他の事業者さんたちからはアクセサリーやネームプレートなど、女性向け、男性向けのさまざまな商品がそろった。

そこで私はターゲットを子どもにし、よりキャッチーなものを考えた結果、「うんこはく君」が出来上がったのだ。決して短絡的なウケ狙いではない。事実、「うんこはく君」を通じて琥珀に関心を持つ子が増えることを望んでいるのだ。

余談だが、象糞から紙を作り、生物保全を訴えている環境保護団体もある。うんこをマイナスイメージと決めつけるのはナンセンスだ。

私は最近、『ファクトフルネス』という本を読んでいる。メイン著者のハンス・ロスリング氏は医師であり公衆衛生学者だ。内容はざっくり「事実に基づいて考えよう」というもの。事実とは正しいデータのこと。人間は「ネガティブ本能」や「焦り本能」などによって事実と違った見方をしてしまいがちである。

ネガティブなことはニュースになりやすい。最近のニュースは新型コロナウイルスで持ち切りだが、内容は不安を煽るだけのようだ。噓情報による買い占めが起こり、生活必需品の品切れや転売が相次ぐというニュースへの不安からまた買い占めが起こる。一方、顧客が減った物は安売りされ、コロナショックによるデフレーションも始まっているようだ。まさにパニック状態であると思う。

実際、新型コロナウイルスの致死率はどのくらいなのか。感染者の出ていない地域の地元イベントまで中止する意味があるのか、経済不況により亡くなる人が出るのではないか。しっかりとしたデータと計算に基づいて考えることが大切だ。

ところで琥珀はパワーストーンでもあり幸運が舞い込むのだとか。うんこはく君は「運琥珀」というもじりでもある。

琥珀を持って幸運になったというデータは無いが、そこは「信じるものは救われる」ということで……。
 
(藤織ジュン=北三陸観光大使、久慈市在住)

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2020年4月20日月曜日

『移ろい、家族』 (デーリー東北新聞 2020年2月19日掲載)

『移ろい、家族』
(デーリー東北新聞 2020年2月19日掲載)



先日、家族が増えた。新しい家族は犬で、犬種はコーギー。
生まれて3カ月ほどのまだ赤ちゃんだ。

夫の実家の犬が昨年他界し、生まれた時からずっと犬と暮らしていた夫は、ある日私に犬が欲しくなったと言った。命を買うことに抵抗があった私は、そもそも犬を飼ったことがないこともあり、戸惑っていた。しかし私がはっきり了承する前に犬が家にやってきた。

旦那はいつもそうだ。自分が決めたことは結局誰の反対も聞かない。結婚の時もなんだか押し切られてしまったように思う。私はあまり結婚したことを今日まで公にしていなかった。何故なら、私が結婚を理由に東京から久慈市に移住したと思われたくないからだ。
私は自分の意思で此処に住むと決めたのだ。

確かに、夫の収入があるから観光海女や北三陸のPRといった不安定な仕事に挑戦していけるというのはあるが、銀行口座も財布も一緒にせずに今はなんとか生活できている。当時、彼だった旦那は、いつの間にか私の部屋に住み着き、私が2人で住むアパートをまだ先の夢のように調べ始めた頃、迷いなく契約してしまった。プロポーズらしいものもなく、いつの間にか結婚することになっていた。

そうして一緒になってもうすぐ2年がたつ。とはいえ、一緒の生活は悪くない。変わり者同士、うまくやれていると思う。結婚すればすぐ子どもがどうだと言う大人がたくさんいて嫌になるが、そもそも望むか望まないかはプライベートであり、望んだとしてポンとできる訳ではないのだから、軽く言わないでほしい。

私は『家族』というものは遷移的で不思議な流れの中にあるように思う。自分で選択することもあるが、流れ着くようにそうなっていることの方が多い。
私は生まれる前に母や父を決めた訳ではない。生まれた時、色白で目の大きい女性を母と言われ、色黒の顔の怖い男を父と言われ、天然パーマのやかましい女の子は姉と教わった。そのうち、自分にそっくりな顔をした弟ができた。誰一人として私が望んだメンバーではなかったが、悪くはなかった。それはとても幸運なことだった。

今、私は実家を出て、他人だった人と夫婦になり、犬を飼った。2人と1匹の生活。正直
最初は怖かったが、家に迎え入れてしまえば愛着が湧くものだ。これが欲目というものか
。寝ている時がとてもかわいい。

昼間は暴れて噛み付くから少々困る。本によると、乳歯がかゆいのだそうだ。犬にも乳歯と永久歯があることを初めて知った。こんな風に犬が私に教えてくれることが、これからもさまざまあるのだろう。

そして、今月末には実の姉が結婚式をする。私より年下の義兄さんはPCゲームが得意だ。もちろん、私が決めた相手ではないが、悪くはないと思っている。いつか、夫婦で犬に会いに来てほしいな。その時までに噛みつかないようにしつけなくては。変わり続ける家族という関係が、これからも良い方向に流れ着いていきますように。

(ふじおり・ジュン=北三陸観光大使、久慈市在住)