(デーリー東北新聞 2020年1月15日掲載)
新たな年が始まった。
今年は十二支の初めの子年。
新しいスタートという情調がさらに際立つ。
12月の中旬、とある飲食店のマスターと年賀状の話になった。
マスターは「うちは飲食店だからネズミはちょっと縁起が悪い。表にもネズミのイラストが無いものを買った」と言った。
なるほど。
私は観光のPRを行う会社を経営しているため、毎年お世話になった方々に会社から年賀状を送る。飲食関係者もいるので気を付けなければならないと思った。私も表にネズミのイラストが無い年賀状を購入し、裏のデザインは悩んでハリネズミのイラストにした。ハリネズミはモグラの仲間らしい。
ネズミは飲食店以外でも嫌われ者なのか、干支をイメージした商品を販売するさまざまなブランドが、なぜか今年は招き猫のモデルにすることが多い。G-shockの限定腕時計もお年玉切手シートもワコールの干支デザイン下着も今年は招き猫である。ネズミを避けるとて、なぜ強敵である猫を代替にしてしまったのか謎ではあるが、少し干支のネズミがかわいそうになってくる。
ネズミにも縁起があるはずと思い調べてみると、ネズミは子をたくさん産むため子孫繁栄や転じて何事も繁栄し金運がアップすると言われているそうだ。昔話『ネズミの餅つき(おむすびころりん)』ではネズミが地中の穴の中で餅をついており、金や宝石をたくさん持っていた。まさにこれがネズミの縁起イメージそのものなのである。
話は変わるが、餅といえば、東京出身の私は久慈市に移住した四年前に初めて煉りくるみをつけた餅を食べた。こちらではスタンダードな食べ方と聞いて驚いたものだ。甘くてクリーミーな味わいにすぐに虜になり、今年のお正月にもいただいた。
「東京の方では餅はどう食べるの?」と聞かれることも多い。スタンダードなのは醤油と海苔の磯辺餅か、きな粉をまぶしたものだろう。あんこや納豆というのもある。それから大根おろしと醤油と七味で食べる辛み餅が好きな人もいる。辛み餅は北三陸地域ではあまり食べないようで、話すと驚かれる。
大根おろしといえば、ネズミの話に戻るが大根とネズミが一緒に描かれたイラストや置物も縁起物とされるらしい。大黒様の使いとされるネズミは「大黒ネズミ=大根食うネズミ」という語呂合わせから来るのだとか。
イギリスでは、生涯同じパートナーと過ごすネズミにあやかって、結婚式会場などに飾るウエディングマウスというぬいぐるみがあるそうだ。世界的に有名なキャラクターにもネズミをモチーフにしたものが数多くある。
ちなみに北限の海女さんたちが「ウミネズミ」と呼ぶ生き物はアメフラシ(ウミウシの大きい種類)を指す。海女さんたちの中では見た目が嫌いという人が多いが私は可愛いと思っている。
嫌われたり好かれたりのネズミの年だが、さて、どんな一年になるのか。ネズミは「=寝ず身」との語呂合わせから「寝ずに働き財を集める」という意味もある。私としてはそのくらいにお仕事が舞い込むとうれしい。
(ふじおり・ジュン=北三陸観光大使、久慈市在住)
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