『移ろい、家族』
(デーリー東北新聞 2020年2月19日掲載)
先日、家族が増えた。新しい家族は犬で、犬種はコーギー。
生まれて3カ月ほどのまだ赤ちゃんだ。
夫の実家の犬が昨年他界し、生まれた時からずっと犬と暮らしていた夫は、ある日私に犬が欲しくなったと言った。命を買うことに抵抗があった私は、そもそも犬を飼ったことがないこともあり、戸惑っていた。しかし私がはっきり了承する前に犬が家にやってきた。
旦那はいつもそうだ。自分が決めたことは結局誰の反対も聞かない。結婚の時もなんだか押し切られてしまったように思う。私はあまり結婚したことを今日まで公にしていなかった。何故なら、私が結婚を理由に東京から久慈市に移住したと思われたくないからだ。
私は自分の意思で此処に住むと決めたのだ。
確かに、夫の収入があるから観光海女や北三陸のPRといった不安定な仕事に挑戦していけるというのはあるが、銀行口座も財布も一緒にせずに今はなんとか生活できている。当時、彼だった旦那は、いつの間にか私の部屋に住み着き、私が2人で住むアパートをまだ先の夢のように調べ始めた頃、迷いなく契約してしまった。プロポーズらしいものもなく、いつの間にか結婚することになっていた。
そうして一緒になってもうすぐ2年がたつ。とはいえ、一緒の生活は悪くない。変わり者同士、うまくやれていると思う。結婚すればすぐ子どもがどうだと言う大人がたくさんいて嫌になるが、そもそも望むか望まないかはプライベートであり、望んだとしてポンとできる訳ではないのだから、軽く言わないでほしい。
私は『家族』というものは遷移的で不思議な流れの中にあるように思う。自分で選択することもあるが、流れ着くようにそうなっていることの方が多い。
私は生まれる前に母や父を決めた訳ではない。生まれた時、色白で目の大きい女性を母と言われ、色黒の顔の怖い男を父と言われ、天然パーマのやかましい女の子は姉と教わった。そのうち、自分にそっくりな顔をした弟ができた。誰一人として私が望んだメンバーではなかったが、悪くはなかった。それはとても幸運なことだった。
今、私は実家を出て、他人だった人と夫婦になり、犬を飼った。2人と1匹の生活。正直
最初は怖かったが、家に迎え入れてしまえば愛着が湧くものだ。これが欲目というものか
。寝ている時がとてもかわいい。
昼間は暴れて噛み付くから少々困る。本によると、乳歯がかゆいのだそうだ。犬にも乳歯と永久歯があることを初めて知った。こんな風に犬が私に教えてくれることが、これからもさまざまあるのだろう。
そして、今月末には実の姉が結婚式をする。私より年下の義兄さんはPCゲームが得意だ。もちろん、私が決めた相手ではないが、悪くはないと思っている。いつか、夫婦で犬に会いに来てほしいな。その時までに噛みつかないようにしつけなくては。変わり続ける家族という関係が、これからも良い方向に流れ着いていきますように。
(ふじおり・ジュン=北三陸観光大使、久慈市在住)
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