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2020年4月6日月曜日

『多様な生き方』(デーリー東北新聞 2019年7月17日掲載)

『多様な生き方』(デーリー東北新聞 2019年7月17日掲載)



 「この地域に一生住む覚悟ですか?」。私のように地方移住をした人がよく聞か
れる質問である。これにいつもモヤモヤさせられている。

特に別の地域に住む予定も東京に帰るつもりもないし、50歳過ぎても観光海女をやりたいという望みはある。しかし舞台芝居を続けていたらいきなり海女に転身することとなったように、周りの状況や考え方は日々変わっていくと思う。

臨機応変に自分のその時のベストな生き方をしていきたい私は自分の可能性を決め付けた
くない。なので「分かりません。でも今はここに住んでいます」と答えることにしてる。

そもそも、誰もが地域に自分を縛らなくていいはずである。『居住移転の自由』は憲法に定められている。地元暮らしが長いお年寄りも、そこに暮らし続けなければならないわけではないのだ。不便を感じたら交通手段や病院などが多い都会に住んだっていい。

とはいえ、仕事や家族、家などさまざまな事情があり、おのずと「この地域で暮らさなければならない」という状態に陥るのだろう。出張の多い仕事や学業、結婚のため、あるいは若者が都会へ出て行く他は、居住地を移す人が少ないのが現状だ。

地方移住をした私としては、「もっと自由に住む場所を選ぶことができたらいいのに」と思う。令和は『個人の時代』とも称されるように多様な生き方ができるようになった。都会には『アドレスホッパー』と言われる人たちがいる。特定の場所に住まず、ゲストハウスや友人宅など日替わりの場所に帰る人たちのことだ。

アドレスホッパーの人も仕事があるため、ほとんどの人が所属する会社のある都会で生
活している。中にはフリーランスでウェブ関係の仕事などをしている人もいる。そういう生き方なら、地方でもできるかもしれない。地方のゲストハウスなど安い宿泊施設はもってこいだ。フリータータイプの方であれば住み込みの旅館バイトなどもいいだろう。

YouTuberは今やポピュラーになったが、動画の生配信アプリを使って稼ぐ人や、SNSを使ってキャラクターを売ったり、中には人におごられることを生業とする人も現れた。こうした新しい働き方は必ずしも都会でなければできない生き方ではない。むしろ、地方の方が差別化できて有利なことだってある。多様化した現代では、もう居住地のあり方も働き方も今までの常識とは変わってくるだろう。

その中で東京一極集中とならないように地方が対抗するとすれば、居住地の移動をもっと自由にできる社会を目指すというのはどうだろうか。地方移住をしても一生住む覚悟までしなくてもいいし、地元を出て都会に行く人も同じだ。地元に戻ってきてもいいし、また違う地域に住んでもいい。居住地を選ぶ自由がもっと自然になればいい。日本中、いや世界中を旅するインフルエンサーも今からもっと生まれるだろう。

 新しい仕事や住まい方について改めて未来を想像してみよう。北三陸の特徴を生
かした生き方を考えている私は結局、未来も北三陸にいるようだ。


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